目標6:HIV/AIDS、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止 -146

 東ティモールにおけるMillennium Development Goals (MDGs)の目標6。それは、マラリア、結核、HIV/AIDSに立ち向かい、減少させていくこと。今、東ティモールはちょうど雨季。マラリアの季節。ということで、今回は、AFMET(東ティモール医療友の会)のプログラムの中から、マラリア減少の為の活動を紹介したいと思います。

東ティモール・AFMET-東ティモール医療友の会

横浜教区大和教会 渡邉怜子

 ちょっとマラリアから話題がそれますが、最近東ティモールの国営放送では毎日のようにデング熱への注意を呼び掛けています。
kubasa
首都ディリにある国立病院のデング熱による入院患者は200名を超え、病院の許容範囲を優に超えてしまい、今までに10名が亡くなったと伝えられています。AFMETのお手伝いさん、ロザさんの娘さんは今年からディリの学校に通い始めましたが、出血性デング熱で入院、治ったら肺炎になり今も治療中です。ディリに住む日本人の友人達もデング熱にかかったという人が私の知っている限りで7人。蚊が媒介する病気の恐ろしさをあらためて実感しています。マラリアも、蚊が媒介する病気の一つ。私自身も罹患経験があります。激しい頭痛と高熱にうなされ、抗マラリア薬を飲んだ後はしばらく副作用にも悩まされます。日本ではマラリア患者を扱える病院は少なく、入院対象となる恐ろしいイメージのこの病気ですが、ティモールでは単なる風邪同然の扱いです。薬を手に入れるのも簡単。でも、発見が遅れて亡くなる人や、薬の飲み方を誤り耐性が出来、慢性化している人もいます。風邪のような病気ですが、正しい知識が無ければ死んでしまう恐ろしい病気でもあるのです。しかし...実はそんな恐ろしいマラリアは、小さな生活環境の改善で簡単に予防することができるのです。
 
 マラリアを媒介する蚊はハマダラ蚊と言います。予防は単純に、①蚊が生息できない状況を作る、②生息している蚊に刺されないようにする、の2つになります。①蚊が育ちやすい環境、それは水たまりやゴミの中。具体的には、水がめの中、水浴び場のそばの水たまり、タイヤや空き缶が散乱している中、草むらといった場所があげられます。これらの環境を改善すること、または卵やボウフラの段階で蚊を殺すこと。そして、②蚊に刺されないために蚊帳を使ったり、蚊が多い所では長袖、長ズボンを着用するという感じです。住民に対してマラリアとはどのような病気なのか、マラリアにかかった場合どうなってしまうのか、予防するためにはどうしたらいいのかということを、上記のことを踏まえて呼びかけていくのです。現在、保健省は全国でマラリアプログラムを展開しています。各保健機関におけるデータ収集、薬や検査キットの配布と共に、蚊帳や蚊の卵やボウフラを殺すための薬を配ったり、家に蚊よけの薬をまいたりするサービスも行っています。
 
水がめの中のボウフラ
 さて、AFMETの活動の中から、マラリアに関連するものを抜粋してご紹介したいと思います。AFMETでは、保健ボランティアの育成を行い、保健省のプログラムSISCa(地域母子保健プログラム)で定期的にマラリアの予防を呼びかけています。それに加えこちらも保健省のプログラムである、KUBASAを実施しています。KUBASAとはKategorizasaun Uma Bazeia ba Saude Ambienteの頭文字をとったもの。日本語にすると「環境衛生に基づく世帯の分類」という意味になります。保健ボランティアが自分の担当集落の世帯1軒1軒を回り、決められたフォーマットに沿ってその家の環境チェックをし、その家はA=衛生的、B=まぁまぁ、C=不衛生というように分類していきます。そのチェック項目の中にマラリアに関して前述の①、②に当たるものがあります。保健ボランティアはその世帯の住人に対して蚊が大量発生しないためにどうしたらよいかアドバイスするのです。もちろん、今日から一気に全てを改善しろとは言いません。小さな事からでよいから少しずつ住まいの環境を改善していきましょう、と呼びかけるのです。AFMETは、このKUBASAを実施するために保健ボランティアのトレーニングを行い、フォーマットやマニュアル作りから全て保健省と一緒に考えてきました。今年5月に最終評価を行い、今後は東ティモール全国で展開する予定です。
 もうひとつ、AFMETが保健ボランティアグループをサポートして行った事、それはマラリア予防啓発活動+蚊帳配りです。これはラウテン県11村で行われ、4,543世帯に蚊帳を配りました。しかし、蚊帳を配るプロジェクトはインドネシア時代から様々な機関が行ってきていますが、魚を取る網の代わりにしてしまったり、果物を鳥から守るために使うなど住民の理解が思うように得られず、環境衛生改善を呼びかけるよりも効果は少ないと思われています。実際、蚊帳を配っている割にはマラリアの件数は減っていないというのも事実。蚊帳を配るなら、その後地道に、継続的に蚊帳の大切さを訴え、モニタリング(観察し、記録すること)をしていくということが大事なのでしょう。そういう意味でも、このKUBASAは重要な役割を果たします。保健ボランティアによる6カ月に1回のモニタリングによって、住民は定期的に蚊帳の重要さを思い出すからです。
 東ティモールでのマラリアの罹患率は、2000年には住民1,000人に対して113人、それが2007年には206人に増えています。MDGs東ティモールでは、2015年までに45人まで減らすのが目標です。AFMETのクリニックでは、雨季の特に多い月には、月100名以上がマラリアと診断されていましたが、2011年のデータでは、1年間で399名と例年よりは少ない結果となりました。即座にKUBASAや蚊帳配布プロジェクトの効果が出ているとは言い切れませんが、保健ボランティアの10年間の啓発活動が少しずつ実を結び始めている可能性があります。しかし国全体で見るとマラリアのみならずデング熱も蔓延している現状。検査技師の技術や検査キットへの信頼性などマラリア診断にはまだ様々な課題がありますが、不衛生な環境や蚊の多さ、病人の症状などからマラリアがまだまだ多いことは事実であろうと実感できます。これからも「本当は簡単」なマラリア予防を呼びかけ続けていく...。保健ボランティアさんの仕事はまだまだ終わりが見えません。
蚊帳配り

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このページは、jlmmが2012年3月31日 19:00に書いたブログ記事です。

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